四角友里|Yuri YOSUMI
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アウトドアスタイル・クリエイター着物着付け師

ニュージーランド湖畔の森と東京に暮らし、ふたつの国の山歩きをライフワークとする。執筆、講演、アウトドアウェア・ギア開発での表現活動を通して「大好きな自然と自分らしいスタイルで繋がりたい」というメッセージを発信。著書に『デイリーアウトドア』、『一歩ずつの山歩き入門』。

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鳥海山の核心部は、私の苦手な岩稜帯。
新山(鳥海山のピーク)に取り付いたとき、「ああ、頂上は無理かもな」と正直、思った。高所恐怖症の人の気持ちは、そうではない人に理解してもらうのはなかなか難しい。「みんなできるのに、なんでダメなの?」と自分を責めたり、「根性なし!」と自分を鼓舞して登ろうとしたこともあるけれど、どうやってもやっぱりダメで。詳しくはランドネ10月号のルポに書いたけれど、結局は、克服しようと思わず、怖いと思う感情を抱きしめるように向き合ったときに、すこしラクになれたように思う。
あとは、怖いという状況を、笑いに変えるのも、最近いいな〜と思っている方法。集中力を切らさずに、でも、そんな情けない自分を笑い飛ばすこと。→写真はその図(笑)(ランドネ10月号の写真もぜひ)。

もうひとつ。
今回、一番怖いな…と感じた場所で、私の編集担当・佐藤泰那さんが、岩に置いた私の手に、自分の手を上から添えてくれた。手を移動させるたびに、ひとつひとつ「大丈夫ですよ」と言葉にはせずに、想いを込めて。「いっしょに頂上に行きたい」と思ってくれたのが、すごく伝わってきた。…原稿には書けなかったけれど、頂上についてなにより嬉しかったのは「泰那ちゃん、私、登れたー!!ここに来られたーー!!」と彼女に叫べたこと。一面のガスで、頂上からの景色はなーんにも見えなかったけれど、その突き上げるように叫びたくなった気持ちが、頂上にたった証だったんだ。

佐藤さんは私よりも年下だし、山歩き歴は私のほうが長いけれど、岩場の技術としては彼女のほうが上(とはいえお互い高所恐怖症同士の、まだまだ山歩き・修行中の身)

年も、立場も関係なく、山のなかでは「個」になれる。そんな、山歩きって、ほんとうに素晴らしい、と改めて感じさせてもらった鳥海山。

※自分の情けなさを正直に書きましたが、鳥海山の核心部は、高所恐怖症ではないかたにとっては、なんでもないと思います!!!!念のため!!!!すみません!!!!

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Thanks to ランドネ10月号 & Photographer 柏倉 陽介