朝日新聞・土曜版『be』の連載2回目は、山スカートについて。
山小屋での着替えの目隠しになったり、おトイレの際にズボンの裾を気にしなくていい……という、女性が山を快適に歩くための機能性をもつ山スカート。これまでズボンしかなかった女性のボトムスの選択肢にスカートが加わったのは、その利点やファッション性に加え、近年、山歩き自体の価値観が多様化したことと関係があるのではないか、という考察を書かせていただきました。山歩きには、頂上を目指すだけでない、様々な楽しみがあります。山を汚さず、安全に歩けるのであれば、いろんなスタイルの山歩きがあっていい、というのが私がずっと伝えてきたメッセージです。
山スカートは、体力がなかった初心者のころに苦しんだ「わずらわしさ」を解消してくれ、私をすっと山の世界に導いてくれました。スカートを選ぶ女性たちの中には、山に慣れるにつれ、その不便さを感じなくなり、ステップアップとともにズボンを選ぶようになる方も多いと思います。のんびりハイキングのときだけスカートを履いたりと、行き先や気分によって使い分ける人もいるでしょう。ここで大事なのは、選択肢があること(もちろんそれを的確に使う情報も必要)。この多様性や選択肢の多さが、私が夢に描いた世界でした。
山スカートは、初心者の女性たちの心のハードルをさげてくれるだけでなく、ワクワクを高めてくれるアイテムのひとつです。新しい人たちが山へ行かなければ、山の魅力は広がらぬまま途絶えてしまいます。私の住むニュージーランドでは「自然に触れた人こそが、ほんとうに自然を大切にできる」という自然保護の理念のもと、国をあげて山歩きを奨励しています。自然を『enjoy』することの先にある可能性を信じているのです。だからこそ私も、女性たちが当たり前のように山へいく世界になればいいな……といつも願い、発信を続けていきたいと思っています。